中村の考え

トーンクオリティー向上について

楽器の音色について 

以前にピアノの音色について、というトピックで書きましたが、今回はそれに加筆する意味、トーンクオリティーの話をしたいと思う。

トーンクオリティーとは、音量、音色、タッチ、その他様々なファクターで構成されている、要するにその人の「音」の品質のことだ。

例えば、まじめにジャズに取り組んでいるシンガーならば英語の発音は意識するだろう。また、ドラマーならパラディドルをスムーズに出来るようになる等、メカニカル、フィジカルな事柄に対しての意識はあるだろう。スイングするためのリズムの構造を研究したりもしているだろう。
ピアノなら、美しいハーモニーの積み上げ方に対して意識の高い人はいるだろう。複雑に込み入ったポリリズムのフレージングを研究したり、ビバップの奏法を研究したりは誰もがする。
だが、音色のクオリティーの向上を目指しているプレイヤーは大変少ない。
音色は音楽の顔なのだ。音が悪ければどうにもならない。
絵画に例えると、その絵のモチーフや哲学が理解出来ないとしても、絵の具の奇麗さ、色の奇麗さはど等素人にでも判断出来る。それと同じことは無論音楽にもいえる。








シンガーは、自分の体が楽器なので、まずその楽器のポテンシャルを向上させるということは必要不可欠だ。誤解を恐れずにいえば、英語の練習よりも重要だと思う。
みんな圧倒的に歌がへたくそなのだ。
まず声量が圧倒的に足りない。ジャズボーカルは発音の音楽だから、声量はそんなに必要ないと思っている人が多いように思うが、それは大間違いだ。
無論、ジャズはでかい声で歌わなければならない音楽ではない。だけど、声量を持っているか否か、はトータルのトーンクオリティーに大きく関わる。
声量は楽器のポテンシャルだ。まず自分の生声で楽器との音が混じる、つまり楽器と対等な音のクオリティーを持って、その先にマイクがあるのだ。
僕のピアノの音色と、対等の音色を出せなければならない。それは音が混じる、ハーモニーする、ということに対しての最初の一歩なのだ。
多くのシンガーは、アンサンブルするために必要な、最初の一手を持ち合わせていないといえる。
例えると、僕がスタインウェイのピアノを弾いてるとして、シンガーはそれにおもちゃのピアノでアンサンブルしようとしているようなものなのだ。
他の事、リズムのぶれや音程の悪さ、その他色々な負のファクターはケア可能であったとしても、その人の持つトーンクオリティーのお粗末さだけはケアしようがない。


これは全ての楽器の人にいえることだが、トーンクオリティー向上の第一歩は自分の音を100%聞くことから始まる。
これはジャンルも問わない。クラシックでもいえることだ。
100%聞くのはしかし大変難しい。ピアノならば、ダンパーが外れる音とか、それが戻る音、響き線の鳴り方、クラシックの譜面なら、主旋律ではなく内声に隠れている小さな対旋律であるとか、ハーモニー上の隠し味的な音であるとかの、行き先まで見通す、ということだ。
僕のソロピアノを生で聞いたことがある人ならば解るだろうが、僕が全ての音の響きにまで責任を持って演奏している、少なくともそうしようとしていることが理解出来るはずだ。
ピアノの場合は、他の楽器と違い、音色を向上させるための訓練方法は残念ながら、ない。
音色は、イメージ力と、総合的な技術力の向上以外に高める方法がないのだ。
イメージ力を育てるためにも、自分の音を100%聞き取るしかないのだ。

セッションで、爆音で叩くドラマーと当たったことがある。僕の前に弾いていたピアニストは自分の音が聞き取れないようで、苦労しているようだった。
その人が僕の演奏後、やりにくくなかったか?と聞いてきた。
勿論やりやすくはないのだが、僕には演奏は可能だった。
勿論、爆音のドラマーは僕の音を全てかき消す。が、僕は自分の音を100%聞いているので、面的に自分の音を捉えることが出来るのだ。
減衰楽器の奏者が音を面的に捉えることが出来るようになってくると演奏がどんどん楽になってくる。
一拍の打点はそのドラマーの音により全て消えるが、自分の音の響きを聞き取ることにより、全く不具合なく演奏出来るのだ。
だが、無論そのドラマーと僕が積極的に共演したいとは、思わないが。


ドラマーの中には、スティックの先(チップという)が丸いスティックを使おうとする人がいる。
丸いスティックのメリットは、どんな叩き方をしても打面が全て同じ形をしているので、音色が均一になるのだ。
しかしこれは、真に技術があるものにとっては、デメリットでしかない。
打楽器の技術とは、半径5ミリの円の中を全く外れずにシングルストロークを打つ、ということなのだ。早く叩いたり複雑に組み合わされたパターンを叩けることではない。
そういう技術がある人にとって、丸チップは色んな音が出せないデメリットしかないはずだ。
チップがティアドロップ形のスティックならば、打面を変化させることにより微妙なトーンコントロールが可能になるのだ。
それと同様にシンバル等も叩き方によってあまりトーンが変化しないシンバルを好む人が多いように思う。
僕に言わせればナンセンスな話だ。


海外の若手ピアニスト等も音色感に乏しい人が多いのが不思議だ。無論、音が汚すぎて辛い、という程ひどい人もあまりいないが、それでも音色が白黒というかオンオフの2種類しかないようなピアニストが多いように思う。
確かに難しいフレーズやハーモニーには長けた人が多いが、もっと音色にこだわったら良いのにな、と私見だが思う。
ただ、それはアーティストのフェチズムの領域に話が及ぶ。
ある程度のクオリティーをクリアーしているならば、アーティストのこだわる部分がどこにあるのか?という話になる。
例えば、ビバップの薫りフェチもいるだろうし、ポリリズムフェチもいるだろう。英語の発音フェチもあるし、ハーモニーの内声フェチ、オリジナル楽曲フェチ、即興フェチ、又は職人たることに喜びを感じるフェチもいることだろう。アーティストは、どこか自分のディティールにこだわるものだ。

ぼく?無論音色フェチです。

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  1. 2011/01/24(月) 20:55:16|
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コメント

Re: タイトルなし

> >ピアノの場合は、他の楽器と違い、音色を向上させるための訓練方法は残念ながら、ない...
>
> 技術面での訓練方法の話をさせていただいたつもりです。
> 『草』は言うまでもなく誤字でした。
> 大変失礼いたしました。

コメントありがとうございます。
音色の訓練方法が残念ながら存在しないのがピアノという楽器の特徴だと思います。
福山さんは、後進を育成なさるときに、音色に関しての捉え方をどういうふうに指導されているのでしょうか??
他の人の指導方針等にとても興味があります。
良ければ、ツイッター上ででもお話しさせて頂けたら嬉しく思います。
  1. 2011/10/06(木) 21:46:00 |
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  3. 中村 真 #-
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  1. 2011/10/06(木) 18:41:13 |
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